介護ITコンシェルジュ藤田博之氏の”現場で役立つIT活用術”vol.2「サービス担当者会議の日程調整を効率化しませんか?」
ケアマネジャーは、利用者により良いサービスを提供するために医療職や介護職など多職種の方と密に連絡をとらなければなりません。ケアマネジャーへの実態調査において、業務内容で最も手を煩わせている業務が、サービス担当者会議の日程調整だということがわかりました。*1
ケアマネジャーでなくとも目的を達成するための手段として、電話やFAXのみで日程調整を行うことはかなり煩雑なものだということは容易に想像がつきます。
今回はGoogleフォームを使って、サービス担当者会議の日程調整をスムーズかつスマートに行う方法をお伝えします。
Google フォームとは
今回お伝えするサービスは、Googleが提供する無料ツール「Google フォーム」です。これを使えば、アンケートや問い合わせ、申し込みなどのフォームを簡単に作成、集計することが可能です。
Google フォームを使うことのメリットとして、豊富なテンプレート(約20種)、直感で作成できる操作性、回答のリアルタイム集計機能、回答のグラフ化等のアシスト機能などが挙げられます。
これまで紙でアンケートを作成されたことがある方はおわかりだと思いますが、作成よりも回収、そして集計作業に最も手間がかかってしまいます。
スマホなどでフォームを受け取った人も、確認や返信できる場所が事務所に限定されないため素早いレスポンスも期待できるでしょう。
また、これまで集計作業に手間暇かけていた時間はGoogleフォームの集計機能によって負担に感じなくなることでしょう。
サービス担当者会議をよりスムーズに
現在のケアマネジメント現場において、サービス担当者会議の日程調整は、電話やFAXを利用することが主流となってます。流れとしては、参加予定者の都合がつく日を確認するために電話やFAXで各々送信、返信をまとめて日程を調整します。都合が合わなかった人には照会を行い、さらにその返信を待って書類作成という流れです。
これではあまりにも工程が多すぎて、そのほとんどの作業を事務所で行わなければなりません。ケアマネジャーのお仕事は訪問など外勤も多くこなしています。都度FAX確認のためだけに事務所で作業するのは時間も手間も考えられないほどです。更に期日までに返信をもらえない場合だって往々にしてあります。たった一人の欠席者が業務の煩わしさを増大させるのです。参加者にも都合がありますので、こちらの都合を押し付けるのも少し違います。なのでこの辺りを嫌味なくスムーズにこなせると、業務のクオリティは格段に上がるはずです。
では、Google フォームを使った場合はどうでしょうか。
都合がつく日の選択、参加不参加の回答、不参加の場合の照会内容をひとつのフォームにまとめて作成します。
①テンプレートからフォームを選んで修正し
②メールやチャットなどで各人に送信
③各々好きなタイミングで返信してもらい
④リアルタイムで回答内容を集計(不参加の場合の照会も受け取れます。)
煩わしい日程調整業務は、これからはとてもスムーズに行えるのではないでしょうか。
実際に私が作成したフォームはこちらです。
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSfaLEMrdOlXawTm47i4Vns7Fne868y-6aaHbEp5pXBp8_QC2A/viewform
Google フォームを使って日程調整する方法
ここからはGoogle フォームの使い方をお伝えします。作成方法は実際に使って覚えてもらうのが一番です。所要時間はだいたい15分〜30分程度です。2回目以降は5分あれば充分です。
①Googleフォームを開いてみましょう。
まずGoogle ChromeなどからGoogle検索画面を開きます。Googleアカウントにログインしましょう。
右上のランチャーをクリックすると、Googleのアプリがずらりと表示されます。スライドしていくと「Forms」がありますので、そこをクリックするとGoogle フォームが開きます。
②「テンプレートギャラリー」を開きます。
③テンプレートを選ぶ
テンプレートの中から好みのものを選んでもいいですが、ここでは「スケジュール確認」のテンプレートを利用して進めます。
④タイトルや内容を修正したり、質問を追加したりします。
⑤ヘッダー(テーマ)をカスタマイズすることも出来ます。
遊び心がでてきて楽しめます。これだけで会話のネタにもなりそうです。
⑥プレビューを使って実際のフォームを確認しましょう。
問題なければ次に進んでいきましょう。
⑦相手のメールアドレスを収集しましょう。
今後継続したやりとりを行うためにもメールアドレスを収集することをおすすめします。また、回答者のメリットとして回答の控えを自動で指定のメールアドレスに送れる利点もあります。
⑧「回答」タブから「新しい回答についてメール通知を受け取る」設定をします。
⑨フォームを確認(プレビュー)してみます。
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSfaLEMrdOlXawTm47i4Vns7Fne868y-6aaHbEp5pXBp8_QC2A/viewform
実際に使い勝手を確認してみてください。
⑩完成したフォームをメールで送信します。
さきほどと同様に「メールアドレスを収集する」にはチェックを入れておきましょう。
送信先にメールアドレスを指定します。
オプションとして、「フォームをメールに含める」もチェックしておきます。これは、メール本文に今回のフォームが埋め込まれるようにする設定です。メール受信者はいちいちリンクを開く手間が省けます。
相手のメールアドレスが分からないこともあると思います。
その場合は、URLを取得して短縮してから携帯電話のショートメールで送信する方法もあります。下記の図のように「URLを短縮」にチェックを入れて、「コピー」をしてください。
コピーしたものは自分のスマホに送るなりして、ショートメールを使って送信しましょう。
⑪回答を確認しましょう。
回答してもらった内容はGmailに通知が届きます。通知のメールからGoogleフォームを開くと左の画像のように回答内容をグラフで表示してくれるので会議を開催できる日は一目瞭然です。また右の画像のように個別に回答内容を確認することもできます。
ここまで作ってみて今後も利用するシーンがありそうなら、原本として残すことや同僚にも共有することをおすすめします。いちど「仕事の型」を作ってしまえば、今後はそのやり方を繰り返すだけです。(なので冒頭で5分でできると申し上げました)
Tips:QRコードの作り方
「相手の携帯電話番号が分かりません」「仕事の携帯ガラケーなんで・・・」という方もいらっしゃるかと思いますがご安心ください。GoogleフォームをQRコード化する方法を説明します。
様々な方法がありますが、今回はQRのススメを使って説明します。
まずGoogle検索で「QRコード作成」とでも検索してみください。おそらく一番上に表示されるはずです。
サイトを開いたら、「URLをQRコードにします」の下の空欄に⑩でコピーしたURLを貼り付けて「OK」をクリックします。
ダウンロードしてFAX送信表などに貼り付けて利用してください。
「日程調整」をIT化することで考えたこと
いかがでしたでしょうか? 今回の取り組みが日程調整の効率化と同時にペーパーレス化を推進し、オンライン会議の導入もスムーズに行えることになるでしょう。
そもそも会議などは緊急なものではない限り、差し迫った状況で調整するようなものではありません。開催することが事前に分かっている会議は、前もって「2週間〜1ヶ月前に調整する」工夫だけで大幅な時間節約になりますし参加者全員にとって喜ばしいことでしょう。
今回ご覧頂いたGoogleフォームやGoogleドライブなどのツールはGoogle Workspaceを導入すればよりセキュアな環境で利用出来ます。多職種連携、ペーパーレス化、働き方改革などの業務課題はGoogle Workspaceを導入すれば解決できる といっても過言ではありません。
社会福祉法人、NPO法人、公益財団法人、公益社団法人、一般社団法人(非営利徹底型)は無料でGoogle Workspaceを導入することも出来ます。
私も在宅介護の実践者であり、福祉業界のICT化を支える仕事をしております。普段から介護業界の業務課題はICTの力で解決できると申し上げておりますが、決してアナログを否定しているわけではありません。
「対人」のお仕事ですから、なにごともロボットのように事務的に済ませば良いものでもないと考えております。だからこそ業務内容に忙殺されて医療職や介護職など多職種の方との連携が疎かになるのは違うと思うのです。
効率化や経費を削減するためにペーパーレス化を推し進めるのではなく、各々に課された業務がよりスムーズになり多職種連携、延いては介護のケア向上が実現することを願っております。
(出典:*1 厚生労働省 老人保健健康増進等事業 居宅介護支援における業務負担等に関する調査研究事業)
藤田 博之
滋賀県大津市の福祉用具貸与事業所 Social Service -ソーシャルサービス- で勤務。
自事業所において9割以上のペーパーレス化を実現。
福祉用具専門相談員として勤務する傍らITコンシェルジュとして介護事業所や地域の医療介護ネットワークのICT化を支援しています。GoogleやiPhone、iPadなどを用いた業務のペーパーレス化、チームワーク向上などを実践しSNS等で発信中。
自らが主催するICT勉強会や多職種連携のICT化等をテーマに多数講演。介護福祉士・介護支援専門員・福祉住環境コーディネーター