介護ITコンシェルジュ藤田博之氏の”現場で役立つIT活用術”vol.4「オンラインサービス担当者会議を成功させる秘訣 〜サービス提供事業所の巻き込み方〜」

介護ITコンシェルジュ
藤田 博之

サービス担当者会議のオンライン化には取り組めていますか?

昨今の急激なデジタル化とコロナ禍での行動変容により、ケアマネジメントにも少なからず「デジタル化」の変化が起きているようです。ケアマネジメントの「効率化と質の向上」にはオンライン化が必要であることはもはや疑う余地はないでしょう。しかし、ケアマネジャーが「オンライン化するぞ」と意気込んでも、サービス提供事業者がそこに協力しなければ、オンライン化を進めていくことはできません。

今回の記事では、サービス提供事業所を巻き込んでスムーズにオンラインサービス担当者会議を開催する方法についてお伝えします。

オンラインサービス担当者会議の意義

高室先生からのアドバイス(サポート資料(本編)より抜粋)

まず最初に、「なぜケアマネジメントをオンライン化する必要があるのか」について整理をしましょう。

以下、ケアタウン総合研究所の高室成幸先生からのメッセージを引用します。

オンラインサービス担当者会議は、「コロナ禍の3密対策」や「業務改善の手段」と思われがちですが、それだけではありません。

オンラインサービス担当者会議は、より良いケアマネジメントを行う新しい手法の1つです。

オンラインで開催することで、医師や薬剤師などの専門職、普段参加がむずかしい家族の方たちの参加促進、ならびに録画による記録とケアチームとの情報共有が可能となる画期的なものです。

利用者と家族、ケアチームとともに「質の高いケアマネジメント」を目指し、オンライン担当者会議の知識とスキルを習得しましょう。

オンラインサービス担当者会議サポート資料(本編)より

従来の一同に集合して行うサービス担当者会議は、日程調整の難しさ、会議を行う場所までの移動時間も加味したりと集まりづらく、情報の共有がうまく行えていないことが課題としてありました。このような課題をクリアし、情報共有をスムーズにすることでケアチームは、より「質の高い」サービスを提供できるようになることが期待できます。

新型コロナウィルス感染予防対策をきっかけとして生まれた潮流ではありますが、アフターコロナでもこの流れが変わることは無いでしょう。むしろオンラインサービス担当者会議の取り組みがきっかけとして、ケアマネジメントそのものがIT化することに繋がればと考えております。

サービス提供事業者へ参加を呼びかけるには

オンラインでサービス担当者会議を開催するにはサービス提供事業所にも理解をしていただく必要があります。

オンライン会議への参加が初めての方にとっては、どのようなメリットがあり、何のためにオンラインでやるのかイメージができない方もいますので丁寧に説明して理解を求めましょう。以下の3つのメリットを説明しましょう。

サービス事業者向け案内文のひな型

①ご利用者様のご自宅へ集合することなく、それぞれの事業所から参加することが可能

オンラインだとそれぞれの事業所・拠点から会議に参加することができます。

訪問系職種は、会議のたびに現地まで訪問する「移動時間の確保」もしていましたが、オンラインで会議に参加することにより移動する時間を他の時間にあてることができるようになります。

また参加場所は事業所だけではなく、車の中、出先からの参加も可能となり時間の有効活用が可能となります。

②オンライン上でケアプランの確認・検討が可能

ケアマネジャーがケアプランを画面で共有することで、課題の共有を行いやすくなります。

また、ケアプランだけでなく、それぞれのサービス提供事業所が個別援助計画の確認や点検を行うことも可能となり、画面共有やファイル共有を通じて他のサービス事業所との情報共有も可能となります。

あるあるな話ですが、会議中、資料のいったいどこの部分を説明しているのかわからないということがありますが、画面共有をするとカーソルやポインタの位置が表示されるので、逆にオンラインのほうがわかりやすいと感じることさえあります。

通所系サービスを利用されている方でしたらリハビリ中の様子も動画や写真などで共有することができますし、普段伝えづらかった細かなニュアンスまで伝えやすくなり、ご利用者様の様子が更に深く知ることができるようになるでしょう。

また映像で伝えるということには大きな意味があり、間接的に自事業所の特徴などをPRするきっかけにもなるでしょう。

③直接集まらないことによる、コロナ感染のリスク減少

新型コロナウィルスが感染拡大している時期に無理に自宅へ訪問しなくてすみます。

ご利用者様のお宅ではどうしても密になりがちです。

ワクチン接種をしたからといってまだまだ安心できる状況ではありません。

特に、在宅医療・介護系職種の方は1日に何件もご利用者様のお宅へ訪問するため、可能な限り感染拡大リスクを避ける必要があります。

オンラインサービス担当者会議では感染のリスクを大きく減らし、自分自身を守ることにもなるでしょう。

コロナウィルス感染症以外に震災などの自然災害発生時でも、利用者や職員の生命、身体を守り、被害を最小限に抑えた上で、社会的責任として事業継続することが求められます。このようなBCP対策(事業継続計画)に繫がる取り組みにもなるでしょう。

これら3つのメリットは、サービス提供事業所に文書でもお知らせできるようにサポート資料からダウンロードしていただけます。

参加者用資料集を活用しましょう。

このようにオンラインサービス担当者会議の開催には多くのメリットがありますが、

オンライン会議自体に参加したことがなくて不安であったり、ICTが苦手な方もいるので、そのような方には「オンラインサービス担当者会議 参加者用の資料」を用いて説明をしてください。

オンライン会議は誰もが失敗したことがあります。 

よくある失敗例として

「自分の声が相手に届かない」

「相手の声が聞こえない」といった音声トラブルがあります。

このようなトラブルの場合には、一旦「退出してから、再入室してもらう」ことで解決できることもあります。会議をホストをする方は「予め失敗を想定した対処方法」について確認しておくと良いでしょう。

オンライン会議への参加が難しく感じる理由としては、それぞれが参加する端末が違うので操作の仕方がわからない。誰に聞いたらよいのか分からないということもあります。

そこで今回の資料集には、パソコン、タブレット&スマホ用の 出席者マニュアルも用意しておりますのでこちらもご活用ください。

オンラインサービス担当者会議 出席者用マニュアル(パソコン)

オンラインサービス担当者会議 出席者用マニュアル(タブレット&スマホ)

オンラインサービス担当者会議をスムーズに行うためのチェックシート

初めての方には練習の場を提供しましょう

初めてのオンライン会議では、参加者の不安を取り除くことがとても重要なポイントです。

ホストをする方は参加者に対して「練習の場」を提供するのも不安解消に有効な方法です。

スケジュール登録したミーティングの予定を前日に開くことも可能なので、同じミーティングルームでテストミーティングの機会を作りましょう。実際のミーティングルームがそのまま使えるので余分な手間はかかりません。

またZOOM公式の「ミーティングテスト」もあり、音声、ビデオなどの品質を確認することができます。接続先は無人なので気軽に何度でもトライできます。 過去の記事もご参考ください。

このように練習できる場があることを伝えるだけでも参加者の心理的ハードルは大きく下がることでしょう。

また参加者に対しては、オンライン上での参加に限定するものではなく、場合によってはリアルとオンラインのハイブリット型の担当者会議の開催となることもありますので、このような機会を通じてオンラインの良さも理解してもらえると良いでしょう。

会議当日のポイント

今回作成した「オンラインサービス担当者会議」開催サポート資料集はオンラインサービス担当者会議を開催する上で実際に起こりうるトラブルを想定して作られたものです。オンライン会議をホストする方が困った時に資料を開くとその答えがみつかるように情報をまとめております。

実際に参加者の「困った」にも対応できるようにするためには、事前に

  1. 参加者と携帯電話番号を交換しておく
  1. 参加者に「オンライン会議出席方法」マニュアルをお渡しし、自分も印刷して持参する
  2. 当日の接続が上手くいかない参加者には電話でやりとりし、一緒にマニュアルを参照しながら問題を解決する

ようにしてください。

おわりに

ここまで読んで頂きありがとうございました。

コロナ禍以降、私自身もZOOMなどのオンライン会議システムをほぼ毎日利用しておりますが、未だに失敗をしてます。会議中の失敗は数え切れ無いほどです。

当然のことかもしれませんが、失敗を重ねなければ何事も上手くならないので、失敗を恐れずに。そして他者の失敗に対しても寛容になり過度なオンラインアレルギーを起こさない、起こさせないようにして頂ければと考えております。

今回作成した資料は、それぞれの事業所にとって扱いやすいものにしていただきたく、編集可能なWordファイルやExcelファイルで公開しておりますのでサービス提供事業所やご家族への案内テンプレートを編集してご利用ください。

また、今回はサービス提供事業者を巻き込むことを中心に説明しましたが、この資料は自事業所のメンバーや管理者、経営層を説得する材料としても使える資料になっております。

資料集はこちらから一括でダウンロードしていただくことができますので存分にご活用ください。


藤田 博之

Fujita Hiroyuki

滋賀県大津市の福祉用具貸与事業所 Social Service -ソーシャルサービス- で勤務。
自事業所において9割以上のペーパーレス化を実現。
福祉用具専門相談員として勤務する傍らITコンシェルジュとして介護事業所や地域の医療介護ネットワークのICT化を支援しています。GoogleやiPhone、iPadなどを用いた業務のペーパーレス化、チームワーク向上などを実践しSNS等で発信中。
自らが主催するICT勉強会や多職種連携のICT化等をテーマに多数講演。介護福祉士・介護支援専門員・福祉住環境コーディネーター

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